2022年11月30日水曜日

15歳の選択

 15歳の選択

 「15歳の持つ感受性、吸収力、伸びる力。その圧倒的なパワーを私たちは信じています」
 パソコンの向こうで、熱っぽく語られる論議を聴くうちに、高専進学を選択したときの思いが甦り、懐かしさにかられた。あれから約60年。いま、高専教育にどんな夢を抱いているのだろうか。
 「テクノロジー×デザインで人間の未来を変える学校」との理想を掲げ、来年4月に徳島県の山間部、神山町に私立「神山まるごと高専」が開校する。〈テクノロジー〉〈デザイン〉〈起業家精神〉を柱にした19年ぶりの新設高専だ。文科省認可後初めて開かれた「第14回まるごと高専円卓会議」に私もオンライン参加してみた。
 発起人・理事長は、名刺管理サービス「Sansan」創業者の寺田親弘さん。学校長には、福井高専卒業、福井大学を経て「ZOZOTOWN」の技術開発を担った大蔵峰樹さんが就任した。募集するのはデザイン・エンジニアリング学科の1学年40人。全寮制。学費200万円(年問)は給付型奨学金で実質無償となり、ソニーやメルカリなどの著名企業からの支援を受けてスタートする。
 「大学からテクノロジーを学ぶのでは遅すぎる」
 「10代のこの時期がテクノロジーとデザイン、起業家精神を一度に学ぶのに最適」
 「自然の中で学んでこそ、人間の未来を変えられる」……
 との期待の声が続く。ゲスト参加した入山章栄・早稲田大学教授(経営学)は
 「自己決定力をいかに育てるか。失敗を受け入れ、次に挑戦していく意欲を高められる
場にしてほしい」
 と提言していた。
 神山の地にどんな少年少女が集まってくるのだろうか。何を、誰から学ぶのか。すべて自分で選び、自分で責任をとる。15歳のとき、どんな世界へ飛び込むかは、人生における最初で最大の選択だ。どんな道を選ぼうと、自ら正解にしていくしかない。
 「いっしょに理想的な学校を創ろうじゃないか」。開校まもない有明高専の面接時、熱く語りかけた教授の顔が浮かぶ。結果的に、草創期の教師たちが期待する技術者になれなかったが、教育への情熱と新しい「学び」に触れたことは私にとって幸福だった。(2022年12月1日)

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