2020年11月30日月曜日

”謙虚”な宝物.

 ”謙虚”な宝物.

 「あなたは高専で学んでよかったと思いますか」
 コロナ禍で巣ごもりしていた今秋、こんなアンケート調査が舞い込んできた。率直な質問が35問もあった。
 「高専卒の社員・職員の処遇は、同年齢の他学歴の人と比べてどうでしたか」
 「これまでの仕事についてどの程度満足していますか」
 調査しているのは都城高専3期生(1971年機械卒)のTさん。高専卒業後、ガス・エ・不ルギー関係の商社に就職、6年前に44年間の会社員生活を終えた。現在、早稲田大学人間科学部(通信課程)で学び、「高専の社会的評価」を卒業研究のテーマに選んだ。
 この種の調査は文科省などが行っ.ているが、1976年以降の卒業生を対象にしたものがほとんど。Tさんは、設立当初10年の間に入学した「1967年~1976年までの卒業生」を対象にした。社会の第一線を退き、同窓会で会う友入たちがみな、実に多彩な人生を歩んでいたからだ。
 高専もすでに半世紀を超え、様変わりした。専攻科(2年制)が設立され、大学編入者も増え、いまや卒業の約4割(学科によっては5割以上)が進学している。一方、社会的な認知度は高まらず、高専卒は短大卒と一抵りにされることも少なくない。
 いま、「高専生は日本の宝です」と、日本の入工知能研究の第一入者、松尾豊・東大教授は熱く語っている.「10代からハードウエアを学ぶ高専生には技術力と可能性がある」と称賛し、事業創出コンテスト「全国高等専門掌校ディープラーニングコンテスト」(高専DCON)の設立を呼びか
けた。しかし、「なぜか高専生自身はみな自己評価が低い。もっと自分の高い価値に気付いてほしい」と不思議がってもいる。とにかく高専出身者は”謙虚”らしい。
 高専生の進路を切り開きながら生きてきた草創期の卒業生たち。社会の荒波をくぐり抜け、自らの青春を振り返りながら、後輩にどんなメッセージを投げかけているのか。開拓者たちの思いに焦点をあてた研究報告が楽しみだ。(2020年12月1日)