同窓という宝
「高専に進学した時点で、君は"変人"だったんだよ」
10月、古稀を記念した中学校の同窓会(旧荒尾2中、現・海陽中)で幼なじみの友人からそういわれた。
中学3年の秋、地元の三井三川鉱で死者458人、CO中毒患者830人の犠牲者が出た戦後最大の事故があり、その現場の三川坑口を見学していたときだった。高校ー大学という普通の進路ではなく、新設高専を選択したことが冒険に見えたようだ。
「でもね、先が見えないからこそ面白いじゃないか」
15歳のときのそんな気概が懐かしく思い出された。
高専草創期の5年間、学校生活は新鮮でけっこう楽しかった。私は結局、技術者の道から外れてしまったが、何の後悔もない。有明高専同窓会は50周年記念式典を開き、卒業生は約8000人という。みんなはどんな人生を歩んでいるのだろうか。
ところで、国公私立の高専OB、OG、在学生、高専関係者の親睦団体「ヒューマンネットワーク高専(略称HNK)」をご存知だろうか。高専の発展に寄与しようという緩やかな集まりで、2010年に有明高専でも交流会が開かれた。
今年度の第23回交流会は長野高専で開かれ、益一哉・東京工業大学学長(神戸市立高専出身)や竹内芳明・総務省サイバーセキュリティ統括官(高松高専出身)が講演され、深夜2時まで熱く語り合うグループもあった。
全国的にみれば高専同窓生は約40万人。早期の専門教育を受け、新たな道を切り拓いた卒業生たちには、高専という共通のキャンパスで学んだという同窓意識があるようだ。次回の交流会は仙台高専で開かれる予定で、その交流の輪は着実に広がっている。
ふと、三池炭鉱閉山20年をたどる新聞記事で見た級友のY君のことが浮かんだ。炭鉱事故で父を失い、妹2人を学校に通わせるために高専在学中、勉学とアルバイトに追われ、
「父が死んでから数年間の記憶が抜け落ちて……。同級生の顔も名前も思いだせない」
という。日本航空を退職後、脳梗塞で苦しんでいるとも聞いた。卒業以来、再会することはなかったが、元気でいてほしいと切に思う。同時代を生き、ともに青春を過ごしたという記憶は何よりの宝だ。
(2018年12月1日)